例えばB747は重量が重いですが、どこの滑走路でも強度的に降りて大丈夫なのでしょうか?
それを判断する方法がACR/PCR法です。
今まではACN/PCNでしたが、2024/11/27をもってACR/PCR法に移行しました。
しかし、考え方は同じで、メーカーが航空機型式ごとに発行する「ACR(Aircraft Classification Rating)」と各国が空港ごとに公示する「PCR(Pavement Classification Rating)」を比べます。
その結果『ACR≦PCR』であれば強度的には何の制限もなくその滑走路を使用することができるというものです。
目次
定義
定義はAIPで公示されています。
ACR(Aircraft Classification Rating)とは
ACR とは、 舗装に及ぼす影響の程度を航空機の型式ご とに数値で示したものである。ACRの値は、 航空機の総重量、 舗装の種類及び路床強度カテゴリーにより決定される。航空機のACRの値は、航空機製造者が発行する「航空機特性」等に掲げられている。
(AIP ADから引用)
型式ごとのACRは国が公示するのではなく、航空機のメーカーが発行することになっています。
PCR(Pavement Classification Rating)とは
PCRとは、制限なしで受け入れることができる舗装の支持力を数値とこれに続く4文字のコードにより示したものである。各空港におけるPCRの値はAD1及びAD2に記載されるとおりである。
(AIP ADから引用)
このPCRという値は空港の滑走路ごとにAIPに公示されています。
定義を見ただけではピンとこないので以下の実際の数値を見てみましょう。
数値の扱い方
数値の扱い方もAIPに公示されています。
(AIP ADから引用)
(1)の舗装の種類について、コンクリート舗装は「R」、アスファルト舗装は「F」と記載することになっています。
「R」はRigidの頭文字で、「F」はFlexibleの頭文字です。
機種ごとのACR
機種ごとのACRは飛行機のメーカーが発行します。
以下のサイトに載っていました。エアバス(Airbus)のサイトとボーイング(Boeing)のサイトです。
Airbus Aircraft Characteristics
Boeing Airplane Characteristics for Airport Planning
ボーイングとエアバス以外の飛行機もネットを探せばあると思います。
上記のサイトでAirbus、Boeingの各機種のACRを見ることができます。
ACR/PCRの扱い方(例)
例えば大型機のB777-300ERが百里(RJAH)に降りられるか見てみます。
B777-300ERのACR
B777-300ERのACRはBoeing Airplane Characteristics for Airport Planningのサイトから見ることができます。(p.164)
ACRの値は滑走路がコンクリートかアスファルトか、路床強度カテゴリー(A~D)によって変わります。実際の表はアクセスして見てみてください。
また、Tire Pressure(B777-300ER=1.52MPa)も記載されています。
百里(RJAH)のPCR
百里はRWYが2本あり、RWY03R/21LとRWY03L/21Rです。
公示されたAIPによるとPCRは以下の通りとなります。
①RWY03L/21R:PCR 628/F/A/X/T
②RWY03R/21L:PCR 691/R/A/W/T
①RJAH RWY03L/21R
まず①の「RWY03L/21R=PCR 628/F/A/X/T」から見てみます。
F:Flexible(アスファルト)
A:路床強度カテゴリー=A(High)
X:許容タイヤ圧力カテゴリー=X(1.75≦MPa)→B7-300ERは1.52MPaと記載があるので許容範囲内
T:評価方法の話なので特に考えなくてよい
以上から、この滑走路の「F/A/X」に当てはまるB777-300ERのACRの値はMaximum weightでACR=580となります。
このACR=580≦628(=PCR)なので全ての重量で百里のRWY03L/21Rに制限なく降りられることになります。
②RJAH RWY03R/21L
次に②の「RWY03R/21L=PCR 691/R/A/W/T」を見てみます。
R:Rigid(コンクリート)
A:路床強度カテゴリー=A(High)
W:許容タイヤ圧力カテゴリー=W(制限なし)
T:評価方法の話なので特に考えなくてよい
以上からこの滑走路の「R/A/W」に当てはまるB777-300ERのACRの値はMaximum weightでACR=790となります。
この(ACR=)790≦691(=PCR)なのでPCRをACRが上回ってしまいます。
そのためMaximum weightでは百里のRWY03R/21Lに降りる場合は制限が発生します。
ACR>PCRとなってしまっても着陸できないわけではありません。着陸はできます。(空港管理者の許可が必要)
自衛隊の飛行場のPCR表記が違う
上記のように滑走路のPCRと飛行機のACRを比べて制限の有り無しを見るのは分かりやすいですが、残念ながらAIPの全ての空港がPCRの記載になっていません。
自衛隊の飛行場は違う表記になっています。
試しに海上自衛隊の下総の飛行場(RJTL)を見てみます。
RJTLのRWY01/19(2250m)の強度の記載は以下の通りです。
SW 43000kg(94600lbs)
DW 56000kg(123200lbs)
DTW 117000kg(257400lbs)
Concrete
この「SW○○kg、DW○○kg、DTW○○kg」などの記号と重量は「車輪配置型式別許容航空機重量」と言います。
それぞれの記号の意味はAIPに記載があります。
・ SW: Single wheel
・ DW: Dual wheel
・ STW: Single tandem wheel
(ST: Two single wheels in tandem type landing gear)
・ DTW: Dual tandem wheel
(DT: Two dual wheels in tandem type landing gear)
・ TTW: Two dual wheels in tandem type landing gear
・ TTTW: Three dual wheels in tandem type landing gear(AIP ADから引用)
主脚(Main Gear)の配置で分類しています。これ以外にも国際的には定義はあるみたいですが、AIPには上記の種類のみあります。
Tandemとは前後に連なるという意味です。
Single,Dual,Tandemの概念
Single,Dual,Tandemという概念は以下の図の通りとなります。
主脚(Main Gear)の配置で飛行機を分類する方式です。
飛行機の荷重はMain Gearに約90%で前輪には約10%くらいしかないのでMain Gearの配置が重要です。
分かりやすくそれぞれ図で示します。
SW=Single Wheel
(例)C47、DC3、F15など
DW=Dual Wheel
(例)A320、B737、E170、DHC-8など
STW=Single Tandem Wheel
(例)C130
DTW=Dual Tandem Wheel
(例)A350-900、B767-300、B787-8,9など
TTW=Two dual wheels in tandem type landing gear
(例)B747など
TTTW=Three dual wheels in tandem type landing gear
(例)A350-1000、B777など
下総飛行場(RJTL) RWY01/19
下総飛行場のPCNは以下の通りでした。
SW 43000kg(94600lbs)
DW 56000kg(123200lbs)
DTW 117000kg(257400lbs)
Concrete
B777などのTTTWは記載が無いので制限なしに降りることができず、B767などのDTWは257400lbs以内であれば制限なしに降りることができることが示されています。
米軍基地はACN/PCN(旧方式)で記載
考え方はACR/PCRと同じです。PCN値はPCR値の約10分の1くらいです。
RJOI(岩国) PCN 65/R/B/W/T
ROTM(普天間) 2700m PCN48/F/A/W/T
RODN(嘉手納) RWY05L/23R PCN 37/R/B/W/T
RODN(嘉手納) RWY05R/23L PCN 45/R/B/W/T
まとめ
新方式のACR/PCR法の考えはACN/PCNと変わりません。
ACR>PCRとなってしまっても着陸できないわけではありません。着陸はできます。
米軍の空港はまだPCNで表記しています。
また、自衛隊の飛行場はPCRではなく「車輪配置型式別許容航空機重量」で表記されます。
エアバスとボーイングであれば、以下のサイトでACRを確認できます。
Airbus Aircraft Characteristics
Boeing Airplane Characteristics for Airport Planning