今回の記事は力学についてです。
飛行機の失速速度Vsは飛行機の重量、configuration等によって変わりますが、揺れにより荷重がかかったり水平旋回時にbankを入れることでも変わります。
どれくらいの荷重がかかったらまたはbankを入れたらVsが変化するのかについてです。
目次
bankと荷重倍数の関係
下の図に力を図示しました。
左図が水平飛行時、右図がbankθ°で旋回中の飛行機に働く力を図示したものです。
荷重倍数とは飛行機にかかっている荷重が自重の何倍(L÷W)かというものです。
左図の水平飛行時は揚力と飛行機の重力は釣り合っているので「L=W」となります。よって「L÷W=1」となります。
旋回時にはL’の荷重がかかっているのでその時の荷重倍数は「L’÷W」となります。
右図(Bankθ°で水平旋回時)では鉛直方向の力のつり合いから「L’cosθ=W」なので荷重倍数とθとの関係は以下の通りです。
例えば60°bank(θ=60°)の時には荷重倍数は2です。
bankと失速速度の関係
具体的に揚力の式は以下の通りとなります。
(CL:揚力係数、ρ:空気密度、V:速度、S:翼面積)
水平旋回時にどれくらい失速速度が大きくなるのかは計算することができます。
失速速度Vsで飛行している時の揚力係数CLは最大揚力係数となります。(CL=CLmax)
旋回時の失速速度をVs'(右図)とします。
旋回時は図よりL’cosθ=W(=L)
「L’cosθ=L」に上記の揚力の式を代入して計算します。
実際にどれくらい増えるか
では旋回時ににどれくらいの荷重倍数でどれくらい失速速度が増えるか見てみます。
水平飛行時の失速速度Vs=100ktとします。
Bank (θ) |
荷重倍数 (1/cosθ) |
失速速度V’ (1/√cosθ) |
5 | 1.00 | 100kt |
10 | 1.02 | 101kt |
15 | 1.04 | 102kt |
20 | 1.06 | 103kt |
25 | 1.10 | 105kt |
30 | 1.15 | 107kt |
35 | 1.22 | 110kt |
40 | 1.31 | 114kt |
45 | 1.41 | 119kt |
50 | 1.56 | 125kt |
55 | 1.74 | 132kt |
60 | 2.00 | 141kt |
旅客機は通常Bank30°内で旋回を行います。Vsが100ktの飛行機は30°bankで約7kt失速速度が増えます。
揺れと失速速度の関係
失速速度が増えるのは旋回時だけではありません。
水平飛行時でも揺れているときには失速速度が増えます。揺れているときにはシートベルトが体を締め付けることがあると思います。その時には荷重倍数が変化しています。
例えば水平飛行時の約1.3Gの揺れに遭遇した時には、上の表からbank40°で旋回している時と同じ荷重です。約1.3Gの揺れというのは飛行機がよく遭遇するコトコトとした軽い揺れです。
40°bank(=約1.3G)で失速速度は14kt増となっています。
まとめ
・荷重倍数=1/cosθ
・Vs’=(1/√cosθ)Vs
・揺れても失速速度は増加する
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