ここだけのパイロットの話

羽田空港(RJTT/HND)のILS X RWY34L Approach

投稿日:21/09/2024 更新日:


今回は羽田空港の北風運用好天時のApproach「ILS X RWY34L Approach」についてのポイントまとめです。

ILS X RWY34L Approach

騒音軽減のため、東京湾水上を飛ぶ経路になっています。

(ILS X RWY34L Approach:AIP Aerodromes RJTTから引用)

高度・速度制限があり、KAIHO 180kt/4000AALLIE 160kt/1500Aです。

よくあるドツボにハマるパターン

よくあるのが先行機と距離が詰まり過ぎてGo aroundするというパターンです。

レーダー間隔は3NMがMinimumですが、KAIHOを出てTWR118.1に移管された後にどんどん距離が詰まって後続機がGo aroundするというパターンが多いです。

KAIHO付近では大体いつも飛行機は180ktを維持しています。

先行機がAVION手前にいたとして、先行機は160ktに減速を始めています。

北風運用ということは北風が吹いているので、KAIHO-AVION間は左からの横風を受けますが、AVION以降TurnしてRWYに正対すると飛行機は向かい風を受けます。

よってAVION以降、計器速度は160ktでも実際は向かい風を受けて対地速度はさらに遅いことが想定されます。
(例えば風が340/20だとすると計器速度160ktでも対地速度は約140kt)

このKAIHO-AVIONの間で先行機との距離があっという間に縮まります。この辺は高度の制限、160ktへの減速、LOC、GSのCaptureで忙しいので先行機との間隔の認識が疎かになりがちです。

KAIHOから着陸までの距離は15.3NMで着陸まで5~6分です。

例えば、30ktの差があれば2分で1NM距離が縮まります

特に北風が強い時には先行機の機種・位置をしっかり見ておくことが重要で、自分がKAIHOを出る時点で前の飛行機と5NMの間隔は欲しいところです。

気温に注意!!Glide slopeの上に行きやすい

(ILS X RWY34L Approach:AIP Aerodromes RJTTから引用)

Glide slopeのビームは気温に関わらず常に3°Pathです。しかしVNAV PATHは気温によって変化するので注意が必要です。

一方、気温が高いと飛行機の真高度は高くなります。「計器高度1,500ft=真高度1,500ft」となるのは標準大気中(海面上気温15℃)を飛んでいる時だけです。

同じ計器高度1,500ftでも海面気温が15℃よりも高ければ真高度は1,500ftよりも高くなります。

どれくらい誤差が出るかの概算をすることができます。

一般的に10℃温度が違ったら4%の高度差が出ます。

例えば、15℃よりも10℃高い海面上気温25℃の空気中を計器高度1,500ftの場合、1,560ftの4%なので60ftの誤差が出て、実際には真高度1,560ftで飛んでいるということです。

その時にはFAFはD4.6ですが、D4.8でGlide slopeをCaptureします。

標準大気の場合の3°Path
AZURE 1,500ft
ALLIE 2,136ft
AVION 2,772ft

標準大気での各高度は上記のようになります。

ここで気温が上がった場合はどうなるか計算してみます。

気温25℃(ISA+10℃)
AZURE 1,560ft
ALLIE 2,196ft
AVION 2,832ft

気温35℃(ISA+20℃)
AZURE 1,622ft
ALLIE 2,283ft
AVION 2,945ft

夏場の気温35℃となるとAZUREで+122ftです。

そうなるとD4.6ではなくD5.0でGlide slopeをCaptureします。

と言うわけで何も考えずにVNAVのPATHに沿って降下していると、いつの間にかGlide slopeの上にいるなんてことが起こり得るので注意です。

これはどのアプローチにも言えることですが、このアプローチでは低高度までFinalに乗らずに減速しながら東京湾からターンしてくるのでGlide slopeの上に行きがちです。

KAIHO過ぎたらさっさと降下するのがおすすめです。


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