東京国際空港の特徴
世界的に見るとアプローチはクセがすごい。後述するが、なんでこのアプローチにした?って感じ。まさに外航泣かせ。
羽田空港は他の空港と違って、天気が良いときと悪いときでアプローチの方式が異なる。
また、都心が近いため騒音軽減方式もあり運用方法は複雑。
もちろん自由は無い。
【滑走路4本】
RWY04/22[2500m]
RWY05/23[2500m]
RWY16L/34R[3360m]
RWY16R/34L[3000m]
1.到着経路とアプローチ
到着経路は北風時と南風時で分かれるのが普通だが、羽田空港はそれに加えて天気の良し悪しでアプローチタイプが変わる。
このように6パターンの運用が考えられる。
[北風運用]
基本的に西からの到着機はRWY34Lを使用し、北からの到着機はRWY34Rを使用する
北風運用時の到着滑走路:RWY34L&RWY34R
北風運用好天時のアプローチ
RWY34L:ILS X RWY34L Approach
(ILS X RWY34L Approach:AIP Aerodromes RJTTから引用)
このように西日本から来た飛行機は東京湾南にあるKAIHOというポイントに集められてそこからアプローチを開始する。
陸地への騒音を考慮して、できるだけ海上を飛ぶルートとなっているのが分かる。高度制限と速度制限が多くなかなか難しいアプローチ。
RWY34R:Highway Visual RWY34R Approach
(Highway Visual RWY34R Approach:AIP Aerodromes RJTTから引用)
空港の東側を北から飛んできて、ウミホタルを視認したらアプローチの管制許可が出される。
CACAOというポイント(木更津の真上)に4000ftで進んでそこからRWY34RにApproachする。
なぜ天気が良いときにしか行われないのか?
それはこのアプローチではウミホタルを視認できないとお話にならないからである。
北風運用悪天時のアプローチ
RWY34L:ILS Z RWY34L Approach
(ILS Z RWY34L Approach:AIP Aerodromes RJTTから引用)
最もシンプルなアプローチ。
天気が悪いときは騒音軽減とか言ってられないのでILS X RWY34L Approachのように海上を飛行するのではなく、千葉県の真上からまっすぐRWY34Lにアプローチする。
西側から来た航空機は全てARLONに集められる。
RWY34R:ILS Z RWY34R Approach
(ILS Z RWY34R Approach:AIP Aerodromes RJTTから引用)
最もシンプルなアプローチ。
悪天時なのでシンプルに千葉の真上からRWY34Rにまっすぐアプローチする。
Highway Visual RWY34R Approachと経路は同じでCACAOは通る。
[南風運用]
基本的に西からの到着機はRWY16L/RWY22を使用し、北からの到着機はRWY16R/RWY23を使用する
南風運用時の到着滑走路(15:00-19:00):RWY16L&RWY16R(←いわゆる都心飛行ルート)
南風運用好天時のアプローチ
RWY16L:RNAV RWY16L Approach
(RNAV RWY16L Approach:AIP Aerodromes RJTTから引用)
いわゆる都心上空を通るアプローチ。
好天気時はRNAV RWY16L Approachが行われる。
ここで注目すべきはfinalでの降下角。
一般的に飛行機は3度の降下角で降りていくのが通常なのに対して、このアプローチは3.45度の角度で設定されているのが分かる。
これは、都心上空をできるだけ高い高度で通過するように設定されており、騒音対策の一環である。
パイロットとしては3.45の角度はとても高い降下率なので非常に気を遣う。
RWY16R:RNAV RWY16R Approach
(RNAV RWY16R Approach:AIP Aerodromes RJTTから引用)
このアプローチの説明は上記のRNAV RWY16Lと同様。3.45度とHigh Pathである。
南風運用悪天時のアプローチ
RWY16L:ILS RWY16L Approach
(ILS RWY16L Approach:AIP Aerodromes RJTTから引用)
騒音軽減のためできる限り降下角が3.45度のRVAV Approachが実施されるが、悪天候時は騒音軽減とか言ってられないので、降下角は3度のILS Approachとなる。
RWY16R:ILS RWY16R Approach
(ILS RWY16R ApproachAIP Aerodromes RJTTから引用)
悪天候時は騒音軽減とか言ってられないので、RNAV Approachと違って降下角は3度となる。
南風運用時の到着滑走路(15:00-19:00以外):RWY22&RWY23
15:00-19:00以外は都心上空を飛ばないように滑走路はRWY22/23を使用する。東京湾を反時計回りにぐるっと1周するような経路となる。
南風運用好天時のアプローチ
RWY22:LDA W RWY22 Approach
(LDA W RWY22 Approach:AIP Aerodromes RJTTから引用)
このLDA Approachというアプローチが曲者。
世界中でもLDAアプローチの空港は珍しく、日本でもこの羽田空港くらいしか運用していない。
LDAアプローチとはILSと違って3度の降下角のガイダンスが無いため、縦方向の降下計画はパイロットに任せられている。
3度で降りていくのか、それよりも浅い角度で降りるかは自由である。(逆を言うとILSよりも考えることがたくさんあるので難しい)
このLDA W RWY22 Approachではfinalを277度で飛行して、1.1DMEを過ぎたら最終的にRWY22(222度)にターンする。
比較的高い高度から滑走路を視認することが重要なので天気が良いときしか実施できない。
右の窓から東京ディズニーランドを見ることができ、夜の飛行であれば運が良ければ花火も見れる。
RWY23:LDA W RWY23 Approach
(LDA W RWY23 Approach:AIP Aerodromes RJTTから引用)
北からの到着機はRWY23(人工島)への着陸となる。
概要はLDA W RWY22と同じ。
南風運用悪天時のアプローチ
RWY22:ILS RWY22 Approach
(ILS RWY22 Approach:AIP Aerodromes RJTTから引用)
天気が悪くなるとLDA W RWY22 Approachは実施できないのでILS Approachとなる。
頻度的には少なめ。
東東京上空を飛ぶのでLDA W RWY22 ApproachができるうちはLDAアプローチをできるだけ運用する。
飛行機に乗って右の窓から東京スカイツリーが見える。(横を通る)
RWY23:ILS Z RWY23 Approach
(ILS Z RWY23 Approach:AIP Aerodromes RJTTから引用)
天気が悪くなるとLDA W RWY23 Approachは実施できないのでILS Approachとなる。
こちらも頻度的には少ない。
説明が長くなったが要するに上記の図の通りである。
2.出発滑走路
今までは到着についてだったが、出発の滑走路についても見てみましょう。
こちらも同じく北風運用と南風運用に分かれている。
[北風運用]
基本的に西への出発機はRWY05を使用し、北への出発機はRWY34Rを使用する(※例外あり)
ここで問題になってくるのは離れ小島のRWY05の滑走路が2500mであること。
はっきり言って長距離国際線の重重量ではRWY2500mでの離陸はキツい。短けーよ。
実はRWY05に向かう途中の橋にも強度的な意味での重量制限がある。
RWY05からの離陸では慣習的にHeading120度の指示が出される。
管制官”Turn right HDG120,RWY05 cleared for takeoff”
基本的に北行きの飛行機はRWY34Rが使用される。
しかし、北行きの便ではなくても上記の理由からRWY05では厳しい場合があるので、あらかじめ指定された便ではRWY34Rからの離陸が許可される運用となっている。
ちなみにこのRWY34Rは到着にも使用されている。
[南風運用]
基本的に西への出発機はRWY16Rを使用し、北への出発機はRWY16Lを使用する
西日本行きの便はRWY16Rから離陸して右旋回をして西進する。
北日本に行く飛行機はRWY16Lを離陸して左旋回後に北上。
ただし、15:00-19:00の間は上記滑走路に加えてRWY22からも離陸が行われる。
RWY22から離陸する便については前もって便ごとに指定される。
3.深夜時間帯の運用
24時間営業である。
深夜時間帯になると上記のアプローチではなくなる。
基本的に滑走路は陸地から遠いRWY05/23,16L/34Rの2本を使用し、陸地に近いRWY04/22,16R/34Lは使用しない。
都心の上空を通るILS Approach等は実施されない。
海の上を通るアプローチが基本となる。