口述対策 ここだけのパイロットの話

Glide Slopeの1dotはどれくらい?修正はどこまで可能?

投稿日:27/11/2024 更新日:


今日はILSのGlide Slopeの話題です。

ズレた場合何ftまでであれば無理なく修正できるかなど実際に操縦する上で役立つ情報です。

Glide Slopeの構造のおさらい

基本的にGlide Slopeをズレなく飛んだ場合は3°Pathで降下します。

機上の計器の1dotのズレは0.36°です。

計器は上2dot、下2dotなので±0.72°(計1.44°)のズレを表示できます。

それを元に計算します。

1dot当たりのGlide Slopeからのズレ

3°Path上で1000ft地点でのズレを計算すると、1dotのズレは120ftでした。

高度が上がれば比例的にズレていくので、2000ftでは240ft、3000ftでは360ftのズレです。

高度が低くなるにしたがってズレは収束してきます。

修正するのはどれくらいPathを深める必要があるか

Glide slopeよりも潜ってしまったら降下率を浅めて修正できますが、Glide Slopeよりも上にズレてしまうと降下率を深める必要があります。

低高度で降下率を深めるのは地面に向かって突っ込むということなので修正操作は慎重に行う必要があります。急降下しないように注意です。

ここでは上に1dotズレた場合のことを考えてみます。

3°Pathの降下率

飛行機のSpeedによって変わってきます。遅い飛行機ほど修正する時間があるので有利であり、早い飛行機ほど修正の時間が少なく不利です。

3°Pathでの降下率は以下の表になります。

飛行機のSpeed 3°Pathの降下率
188kt 1000 ft/min
180kt 954 ft/min
170kt 900 ft/min
160kt 848 ft/min
150kt 795 ft/min
140kt 742 ft/min
130kt 689 ft/min
120kt 636 ft/min
110kt 583 ft/min

概算で「降下率=Speed÷2+50」になっています。

3°Pathで1000ft地点において1dot上ということは120ft上の1120ftにいるということです。

例えば120ft分修正するとき、3°Pathの降下率が850ft/minの場合に970ft/minに深めると1分で修正が終了します。

しかし、1120ftで970ft/minにPathを深めても1分後には150ftの高度にいることになります。

自分が今何ftにいてどれくらいズレているのか把握するのが大切です。

1000ftまでに1dotの上ずれ修正を完了するには

上記の例の150ft地点まで修正しているのは遅いので、せめて1000ftの地点で3°Pathに乗っていたいとします。

どの高度までであれば1dotズレていても焦らず修正が可能なのでしょうか。

120ftの修正は降下率を120ft/min深めれば1分で修正可能です。240ft/min深めれば30秒で修正可能です。

どれくらいPathを深めることができるかで修正の秒数が変わってくるので、ここでは修正に1500ft/minの降下率を使うこととします。

Glide slope+1dotのズレから1500ft/minで修正して1000ftで3°Pathに乗せるためには何ftで修正を開始すればよいかを求めてみます。操作の誤差やリードは含まれないとします。

1dot上にいる時点で修正するためには3.36°Path以上の降下率が必要ですが、253kt以上の場合は1500ft/minが3.36°を下回ってしまうので修正不可能です。

1000ft付近の低高度では200kt以上の速度では通常は飛行しないので200kt以下の場合のみ計算します。

計算結果は以下の通りです。

飛行機のSpeed 修正開始高度
200kt 1574 ft
190kt 1482 ft
180kt 1416 ft
170kt 1365 ft
160kt 1326 ft
150kt 1294 ft
140kt 1268 ft
130kt 1246 ft
120kt 1227 ft
110kt 1211 ft

したがって、200kt以下であれば焦らなくても約1600ftまでに1500ft/minを確立できれば1000ftまでに3°Pathに乗ることができます。

例えばThresholdで1dotのズレはどのくらい?

修正できなくて最後まで+1dotのまま行ったら最終的にどれくらいのズレになるのでしょうか。

Threshold(通常だと50ft)で+1dot上にいる場合のPathのズレは約6ftです。(6ft≒1.83m)

意外に大したことない値です。

ちなみに6ft高く進入して以降通常通りの着陸をした場合、着陸距離の伸びは約115ftです。

+115ftの着陸距離は誤差のようなものです。

まとめ

・1000ftでの1dotのズレは120ft

・+1dot上でも約1600ft時点で1500ft/minを確立できれば1000ftまでには3°に乗れる

・Thresholdで+1dot上でもたったの約6ftのズレ


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