口述対策

【口述対策備忘録】航空事故と重大インシデントの定義

投稿日:


今回の記事はニュースでよく聞く航空の「事故」と「重大インシデント」についてです。

実はこれらには定義があります。

法的定義

航空事故や航空事故等については運輸安全委員会設置法第2条に定義されています。

(定義)
運輸安全委員会設置法 第2条

この法律において「航空事故」とは、次に掲げる事故をいう。
一 航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)第76条第1項各号に掲げる事故
二 航空法第132条の90第1項各号に掲げる事故であつて、国土交通省令で定める重大なもの

2 この法律において「航空事故等」とは、次に掲げるものをいう。
一 航空事故
二 航空事故の兆候(航空事故が発生するおそれがあると認められる国土交通省令で定める事態をいう。)

(運輸安全委員会設置法から引用)

第1項1号の「航空法第76条第1項各号」に当たるものが「航空事故」の定義です。
※第1項2号の「第132条の90」は無人飛行機についての条文

第2項の「航空事故が発生するおそれがあると認められる国土交通省令で定める事態」というのが「航空事故等=重大インシデント」に当たります。

航空法を見てみましょう。

航空法第76条

法第76条

機長は、次に掲げる事故が発生した場合には、国土交通省令で定めるところにより国土交通大臣にその旨を報告しなければならない。ただし、機長が報告することができないときは、当該航空機の使用者が報告しなければならない。
一 航空機の墜落、衝突又は火災
二 航空機による人の死傷又は物件の損壊
三 航空機内にある者の死亡(国土交通省令で定めるものを除く。)又は行方不明
四 他の航空機との接触
五 その他国土交通省令で定める航空機に関する事故

(航空法から引用)

ここに書いてある5項目が発生すると航空事故となります。

航空法第76条の2

法第76条の2

機長は、航行中他の航空機との衝突又は接触のおそれがあつたと認めたときその他前条第一項各号に掲げる事故が発生するおそれがあると認められる国土交通省令で定める事態が発生したと認めたときは、国土交通省令で定めるところにより国土交通大臣にその旨を報告しなければならない。

(航空法から引用)

ここの事項に書かれたことが起こると「重大インシデント=航空事故等」に認定されます。

航空法施行規則第166条の4

この条文にある「事故が発生するおそれがあると認められる国土交通省令で定める事態」とは航空法施行規則に具体的な規定があります。

航空法施行規則 第166条の4

法第76条の2の国土交通省令で定める事態は、次に掲げる事態とする。

一 次に掲げる場所からの離陸又はその中止

イ 閉鎖中の滑走路
ロ 他の航空機等が使用中の滑走路
ハ 法第九十六条第一項の規定により国土交通大臣から指示された滑走路とは異なる滑走路
ニ 誘導路

二 前号に掲げる場所又は道路その他の航空機が通常着陸することが想定されない場所への着陸又はその試み
三 着陸時において発動機覆い、翼端その他の航空機の脚以外の部分が地表面に接触した事態
四 オーバーラン、アンダーシュート及び滑走路からの逸脱(航空機が自ら地上走行できなくなつた場合に限る。)
五 非常脱出スライドを使用して非常脱出を行つた事態
六 飛行中において地表面又は水面への衝突又は接触を回避するため航空機乗組員が緊急の操作を行つた事態
七 発動機の破損(破片が当該発動機のケースを貫通した場合に限る。)
八 飛行中における発動機(多発機の場合は、次のイ又はロに掲げる航空機の区分に応じ、当該イ又はロに定める数以上の発動機)の継続的な停止又は出力若しくは推力の損失(動力滑空機の発動機を意図して停止した場合を除く。)

イ ロに掲げる航空機以外の航空機 二
ロ 垂直離着陸飛行機及びマルチローター 垂直離着陸飛行機又はマルチローターの型式ごとに、継続的な停止又は出力若しくは推力の損失により、当該垂直離着陸飛行機又はマルチローターの航行が継続できなくなるおそれがある発動機の数として国土交通大臣が定める数

九 航空機のプロペラ、回転翼、脚、方向舵だ、昇降舵だ、補助翼又はフラップが損傷し、当該航空機の航行が継続できなくなつた事態
十 航空機に装備された一又は二以上のシステムにおける航空機の航行の安全に障害となる複数の故障
十一 航空機内における火炎又は煙の発生及び発動機防火区域内における火炎の発生
十二 航空機内の気圧の異常な低下
十三 緊急の措置を講ずる必要が生じた燃料の欠乏
十四 気流の擾じよう乱その他の異常な気象状態との遭遇、航空機に装備された装置の故障又は対気速度限界、制限荷重倍数限界若しくは運用高度限界を超えた飛行により航空機の操縦に障害が発生した事態
十五 航空機乗組員が負傷又は疾病により運航中に正常に業務を行うことができなかつた事態
十六 物件を機体の外に装着し、つり下げ、又は曳航している航空機から、当該物件が意図せず落下し、又は緊急の操作として投下された事態
十七 航空機から脱落した部品が人と衝突した事態
十八 前各号に掲げる事態に準ずる事態

(航空法施行規則から引用)

ひとつひとつ解説はしませんが、どれも一目見ただけでヤバそうですね。

航空局の通達にも定義が書かれている

以下の国土交通省航空局が出している通達にも重大インシデントの定義が書かれています。

重大インシデントに関する機長報告の処理要領

この通達によると「航空法施行規則第166条の4各号に掲げる事態」を重大インシデントというと記載されています。


-口述対策
-,

執筆者:


関連記事

【口述対策備忘録】騒音軽減方式まとめ(Noise abatement procedure)

今回は「騒音軽減方式(Noise abatement procedure)」についての備忘録です。 騒音軽減方式とは飛行機の運航する上で出る騒音の影響を少なくする運航方式です。英語ではNoise ab …

救急用具

【口述対策備忘録】救急用具 編

Jです。 飛行機の救急用具についての内容の備忘録です。 救急用具に関する法律 航空法第62条に規定されています。 (救急用具) 第62条 国土交通省令で定める航空機には、落下さヽんヽ、救命胴衣、非常信 …

進入灯

【口述対策備忘録】アプローチライト(ALS)の種類について

Jです。 今回は様々な進入灯、通称アプローチライト(ALS: Approach Lighting syatem)についての備忘録です。 アプローチライトの種類 ①標準式アプローチライト(PALS:CA …

Glide slopeアンテナ

Glide Slopeの1dotはどれくらい?修正はどこまで可能?

今日はILSのGlide Slopeの話題です。 ズレた場合何ftまでであれば無理なく修正できるかなど実際に操縦する上で役立つ情報です。 Glide Slopeの構造のおさらい 基本的にGlide S …

Glide slopeアンテナ

【口述対策備忘録】着陸するときに滑走路のどこを狙うか

Jです。 パイロットは職人的な要素が強い職業だと思います。特に着陸は皆すごく拘りがあります。 着陸もオートパイロットで安全にできてしまう現代においてもほぼ全員が手動で着陸します。 今回は「滑走路のどこ …