滑走路のSlopeのランキングです。(2025年7月現在)
※自衛隊等が使用する傾斜が公示されていない飛行場は除く
滑走路は平坦ではなく傾斜があり空港ごとに公示されています。
滑走路の傾斜は様々なことに影響します。
滑走路の傾斜が性能や操縦にどう影響するのかをまとめました。
目次
滑走路の傾斜(Slope)ランキングTOP15
ここでは滑走路2000m以上の定期便が就航している空港から選定しました。
①福江空港,熊本空港:0.91%
【福江空港 RWY03/21】
(AIP AERODROMES RJFEから引用)
【熊本空港 RWY07/25】
(AIP AERODROMES RJFTから引用)
③宮古空港:0.9%
【宮古空港 RWY04/22】
(AIP AERODROMES ROMYから引用)
④松本空港:0.85%
【松本空港 RWY18/36】
(AIP AERODROMES RJAFから引用)
⑤函館空港,徳島空港,石垣空港:0.8%
【函館空港 RWY12/30】
(AIP AERODROMES RJCHから引用)
【徳島空港 RWY11/29】
(AIP AERODROMES RJOSから引用)
【石垣空港 RWY04/22】
(AIP AERODROMES ROIGから引用)
⑧八丈島空港:0.79%
【八丈島空港 RWY08/26】
(AIP AERODROMES RJTHから引用)
⑨松山空港:0.78%
【松山空港 RWY14/32】
(AIP AERODROMES RJOMから引用)
⑩女満別空港:0.779%
【女満別空港 RWY18/36】
(AIP AERODROMES RJCMから引用)
⑪八戸空港:0.76%
【八戸空港 RWY07/25】
(AIP AERODROMES RJSH)
⑫紋別空港:0.752%
【紋別空港 RWY14/32】
(AIP AERODROMES RJEBから引用)
⑬旭川空港:0.75%
【旭川空港 RWY16/34】
(AIP AERODROMES RJECから引用)
⑭奄美空港:0.73%
【奄美空港 RWY03/21】
(AIP AERODROMES RJKAから引用)
⑮新潟空港,鹿児島空港:0.72%
【新潟空港 RWY10/28】
(AIP AERODROMES RJSNから引用)
【鹿児島空港 RWY16/34】
(AIP AERODROMES RJFKから引用)
2000m未満の滑走路含めたランキング
参考情報として2000m未満の滑走路を含めたランキングです。
あまり馴染みのない名前の空港・飛行場がランクインしているのではないでしょうか。
傾斜は1%を超えるものが多くあります。
1%以上の傾斜のランキングです。
①新潟 1.59%(RWY04/22)
RWY04/22は1400mの長さですがこれが全国で一番傾斜が大きい滑走路です。
RWY10/28も傾斜は0.72%あり、上記のランキングの15位にランクインしています。
②十勝 1.5%
十勝飛行場は北海道の十勝平野にあります。陸上自衛隊の駐屯地です。
③大村,神津島 1.3%
大村飛行場は長崎県で、自衛隊の飛行場です。
神津島は東京都の離島です。調布ベースの新中央航空が就航しています。
⑤佐渡 1.23%
2025年7月現在定期便はありませんが、今後トキエアーが就航予定です。
⑥波照間 1.2%
波照間島は日本有人最南端です。
⑦新島 1.021%
新島は東京都の離島です。
調布ベースの新中央航空が就航しています。
⑧伊江島,壱岐,上五島,小値賀,岡南 1%
伊江島空港は沖縄の離島です。
壱岐、上五島、小値賀(おぢか)は長崎県です。
岡南は「こうなん」と読み、岡山県にあります。
滑走路の傾斜(Slope)の見え方
傾斜があるとパイロットは錯覚を起こします。
登り傾斜(Up slope)の滑走路に進入しているときには反り立っているように感じます。そのため進入のPathが通常よりも高いと錯覚してPathを低くしてしまいがちです。
例えば熊本空港でRWY07に進入しているときには最大傾斜0.91%の登り坂なのでかなり自機が高くにいるように見えます。
下り坂(Down slope)の時には逆でPathが低いと錯覚して、高くしてしまいがちです。
0.5%程度の傾斜でも見え方は全然違います。
傾斜と飛行機の性能の関係
離陸する場合の性能ですが滑走路が登り坂の場合は加速が遅いので不利になり、下り坂の場合は早く加速できるので有利になります。
着陸する場合は逆に登り坂の場合は早く止まることができ有利ですが、下り坂の場合は不利になります。
傾斜による着陸の操作への影響
Up slopeの時には通常よりも早めにフレア操作をする必要があります。
計算を簡単にするために例えば滑走路にVS-600ft/min(=10ft/sec)で進入している飛行機を想定します。
平坦な滑走路ではThreshold通過高度の約50ftから接地までフレアをしなければ約5秒で接地しますが、実際は30ftくらいからフレア操作(Pathを浅める機首上げ操作)を行います。
フレア操作によって30ftで600ft/min(=10ft/sec)から半分の300ft/min(=5ft/sec)にしてそのまま接地するとすると30ftから接地までは計算上6秒かかります。
Approach時のPitchは約2°で、接地時は約4.5°なので平均すると6秒で2.5°Pitch Up(=0.4°/sec)となります。
滑走路にSlopeがある場合、そのSlopeに平行になるようにPitchを調整しないといけないです。
例えば0.7%(=0.4°)のUp Slopeがある時には0.4°余計にPitch Upが必要です。
対応はフレアの開始高度を早めるか、フレアのRateを早くするかの2択ですが、操作Rateは毎回同じ方が良いので開始のタイミングを変える人が多いと思います。
0.7%(=0.4°)のPitch Upに必要な時間は約1秒なのでいつもよりも1秒早く開始すればよいということになります。
フレア初期の降下率はほぼ600ft/min(10ft/min)なので10ft早めの40ftでフレア開始すると、通常時の30ft通過時点で0.7% Up slope分は相殺できていることになります。
つまりUp(Down) Slope 0.7%あたり10ft早く(遅く)フレアを開始すれば傾斜分を相殺できます。
もちろん傾斜の急な場所によっても違いますが、上記のランキングに入っているような空港では、パイロットはそれくらいの修正を行っています。
あくまで仮定に仮定を重ねた雑な計算ですが経験上大体合っていると思います。
まとめ
・2000m以上の定期便が就航している空港では福江空港と熊本空港の滑走路が一番傾斜が急
・国内で一番傾斜が急なのは新潟空港のRWY04/22
・Up slopeではPathを低くしがちで、Down slopeでは高くしがち
・0.7%あたり±10ftフレア開始高度を調整すればよい