今回は皆が苦手なAirspeedについてです。
高度・気温がTASに及ぼす影響について記事にしました。
目次
TASの算出過程
パイロットが飛行機に入力するSpeedはIAS(Indicated Air Speed)です。しかし、実際に飛行機の速度というのはTAS(True Air Speed)です。
速度を出して目的地に早く着きたいときに一番大事なのはTASと風です。
IAS→CAS
CAS→EAS
EAS→TAS
の三段階の変換が必要です。
IAS,CAS,EAS,TASがそれぞれ何なのかは調べればどこかのサイトに分かりやすく書いてあるのでここでは割愛します。
IAS→CAS
取り付け誤差による補正です。
IASからCASの変換は飛行機の種類で決まっています。
例えば「CAS=IAS+2kt」のような感じです。
CAS→EAS
空気の圧縮性の補正です。速度が小さいと影響はほとんどありませんが、高速域では空気の圧縮性は無視できません。
式は複雑なのでここでは結果だけ載せておきます。
近似式は以下の通りとなります。
M:Mach number
δ:圧力比(=P/P0)
EAS→TAS
空気密度の補正です。
これも結果だけ載せておきます。
式は以下の通りです。
ρ0:標準大気の空気密度
ρ:空気密度
例えばIAS310ktのTASは?
※標準大気として計算
※IAS=CASとして計算
高度(ft) | TAS(kt) | Mach number |
35000 | 518 | M.899 |
34000 | 510 | M.882 |
33000 | 503 | M.864 |
32000 | 495 | M.847 |
31000 | 487 | M.831 |
30000 | 480 | M.815 |
29000 | 473 | M.799 |
28000 | 466 | M.783 |
27000 | 459 | M.768 |
26000 | 452 | M.754 |
25000 | 445 | M.739 |
24000 | 438 | M.725 |
23000 | 432 | M.711 |
22000 | 425 | M.698 |
21000 | 419 | M.685 |
20000 | 413 | M.672 |
1000ft当たり約7ktのTASの変化があることが分かります。
また、RVSMの下限のFL290で310kt=M.80となります。
上記の表はFL350よりも上は書いていません。
飛行機は高高度ではIASではなくMach Numberを使います。
高高度では飛行機の速度はMach Number
IASで表すのは30000ft台前半までです。
それよりも高高度での速度はIASではなく音速との比(Mach number)で表します。
速度M.80であれば音速の0.8倍という意味です。
気温によって音速は違うので同じM.80でもTASは違います。
音速の近似値
音速Vの近似値を表す式がV[m/s]=331.5+0.6t [℃]なのは有名です。
飛行機の速度の単位はknot(ノット)で表すのでこの式を少し変形させます。
1kt=1852[m/h]=0.5144…[m/s]なので1[m/s]=1.94[kt]です。
よってV[kt]=331.5×1.94+0.6×1.94t [℃]=643+1.17t[℃]となります。
例えば標準大気平均海面上(t=15)での音速は661ktとなります。
気温と音速の関係
M.80で飛んでいる飛行機の周りの気温が4度上がったとすると、音速は1.17×4=4.68≒5kt大きくなります。
M.80は4.68×0.8=3.744≒4kt上がります。
概算するとM.80付近の速度で飛んでいる飛行機において、気温が1℃上がるとTASは1kt上がります。
その日の鉛直の温度分布が大事になってきます。
M0.01増速するとTASは何kt増速するか
音速の式がV[kt]=643+1.17t[℃]です。
Mach (M)をMach (M+0.01)に増速させるとします。その差のΔMを式から求めてみます。
ΔM=(M+0.01)(643+1.17t)-M(643+1.17t)
=0.01(643+1.17t)
=6.43+0.0117t[℃]
例えば
t=-30℃のときΔM=6.079kt
t=-40℃のときΔM=5.962kt
t=-50℃のときΔM=5.845kt
t=-60℃のときΔM=5.728kt
よってどんな気温帯でもM0.01増速するとTASは約6kt増速します。
例えばM.80のIAS、TASは?
高度(ft) | IAS(kt) | TAS(kt) |
41000 | 237 | 459 |
40000 | 242 | 459 |
39000 | 248 | 459 |
38000 | 254 | 459 |
37000 | 260 | 459 |
36000 | 266 | 459 |
35000 | 272 | 461 |
34000 | 278 | 463 |
33000 | 284 | 465 |
32000 | 291 | 467 |
31000 | 297 | 469 |
30000 | 304 | 471 |
Mach number一定での上昇では速度は減少しながらの上昇になります。
IAS一定の上昇はTASは増速しながらの上昇なので、Mach number一定での上昇の方が上昇率は良くなります。
TASについては気温減率が1000ftで-2℃なのでTASは2ktずつ減少していきます。
標準大気は高度11km(約36000ft)以上では気温一定なので36000ft以上で音速は一定となりMach number一定の場合はTASも一定となっています。
まとめ
・IAS一定の時、1000ft上昇するとTASは約7kt増加する
・Mach領域で気温が1℃上昇するとTASは約1kt増速する
・IAS M0.01増速するとTASは約6kt増速する
・Mach一定の場合FL360以上ではTASは変化せず、それ以下では1000ft降下毎に2kt増加する
・FL290で310kt=M.80