口述対策

【口述対策備忘録】航空保安無線施設の周波数と特性の違い

投稿日:30/01/2025 更新日:


航空法施行規則第97条によると航空保安無線施設は「TACAN,DME,VOR,ILS,NDB,衛星航法補助施設」の6つです。これらは電波を使っています。

またそれ以外にも飛行機を運航する上でパイロットは無線電話を使いますが、無線もVHF、HFなど様々な種類の周波数帯を使っています。

今回はその周波数と特性についてのまとめです。

UHF(Ultra High Frequency)

「極超短波」と言います。

定義は「電波法施行規則」に記載があり、300MHzを超え、3000MHz以下の周波数帯となっています。

c(光速)=f(周波数)×λ(波長)より、波長は0.1~1mです。
※光速c≒300,000,000 m/s

DMEとTACANという航空無線施設がこの周波数帯の電波を使っています。DME、TACANの定義も電波法施行規則に書いてあります。

電波法施行規則第2条51
「航空用DME」とは、960MHzから1,215MHzまでの周波数の電波を使用し、航空機において、当該航空機から地表の定点までの見通し距離を測定するための無線航行業務を行う設備をいう。
51の2
「タカン」とは、960MHzから1,215MHzまでの周波数の電波を使用し、航空機において、当該航空機から地表の定点までの見通し距離及び方位を測定するための無線航行業務を行う設備をいう。

(電波法施行規則から引用)

UHF電波は直進性が高いため、見通し圏内でしか使用できません。

VHF(Very High Frequency)

「超短波」と言います。

定義は「電波法施行規則」に記載があり、30MHzを超え、300MHz以下の周波数帯となっています。波長は1~10mです。

VHF無線電話、VORがこの周波数帯を使っています。

電波法施行規則第2条50
「VOR」とは、108MHzから118MHzまでの周波数の電波を全方向に発射する回転式の無線標識業務を行なう設備をいう。

(電波法施行規則から引用)

VHF電波も見通し圏内でしか使用できません。NDBほど遠くから受信はできませんが、使用時にはとても精度が高く信頼性が高いのが特徴です。

またFMラジオもこの周波数帯です。

HF(High frequency)

「短波」と言います。

定義は「電波法施行規則」に記載があり、3MHzを超え、30MHz以下の周波数帯となっています。波長は10~100mです。

HF無線電話がこの周波数帯を使っています。

VHF電波は見通し圏内でしか受信できませんが、HF無線は太平洋の真ん中や地球の裏側でも受信することができます。

しかし、HF無線はVHF無線よりも雑音が多く、聞き取りにくいことがあります。また電離層の位置関係で使える周波数が変わります。

一般的に、夏場や昼間は高い周波数で、冬場や夜間は低い周波数となることが多いです。

MF(Medium Frequency)

「中波」と言います。

定義は「電波法施行規則」に記載があり、300kHzを超え、3000kHz以下の周波数帯となっています。波長は100m~1kmです。

NDBという航空保安無線施設はこの周波数帯(190~415kHz)を使用しています。(一部LFの周波数もある)

飛行機の機上装置でADFという装置があればこのNDBの電波を受信することができます。

VORであれば見通し圏内になるまで受信することができませんが、NDBであればさらに遠くから受信が可能です。したがって太平洋上で陸地から遠く離れている場合でも受信が可能で、その電波をだどって陸地まで行くことができます。

アリューシャン列島のコールドベイ空港、キングサーモン空港はVORだけでなくNDBもあります。ミッドウェー島、マーシャル諸島のマジュロ国際空港にはVORは無くNDBだけ存在します。

また、AMラジオもこの周波数帯です。VHF帯のFMラジオに比べ、遠くまで電波が届きます。ADF装置ではNDBだけでなくラジオ放送も受信することができます。

LF(Long Frequency)

「長波」と言います。

定義は「電波法施行規則」に記載があり、30kHzを超え、300kHz以下の周波数帯となっています。波長は1~10kmです。

NDBという航空保安無線施設はこの周波数帯(190~415kHz)を使用しています。(一部MFの周波数もある)

飛行機の機上装置でADFという装置があればこの電波を受信することができます。

まとめ

UHF(300MHzを超え、3000MHz以下):DME,TACAN
VHF(30MHzを超え、300MHz以下):VOR,VHF無線電話,FMラジオ
HF(3MHzを超え、30MHz以下):HF無線電話
MF(300kHzを超え、3000kHz以下):NDB,AMラジオ
LF(30kHzを超え、300kHz以下):NDB

UHF側ほど精度は良いが到達距離は短く、LF側ほど精度は悪いが到達距離が長い。


-口述対策
-

執筆者:

関連記事

【口述対策備忘録】航空事故と重大インシデントの定義

今回の記事はニュースでよく聞く航空の「事故」と「重大インシデント」についてです。 実はこれらには定義があります。 法的定義は運輸安全委員会設置法 航空事故や航空事故等については運輸安全委員会設置法第2 …

救急用具

【口述対策備忘録】救急用具 編

飛行機の救急用具についての内容の備忘録です。 救急用具に関する法律 航空法第62条に規定されています。 (救急用具) 第62条 国土交通省令で定める航空機には、落下さヽんヽ、救命胴衣、非常信号灯その他 …

【口述対策備忘録】飛行機の地上走行(Taxi)について

今回は地上走行(Taxi)についてです。 たかが地上走行でしょと思われますが、教官曰く「Taxiを見れば全て分かる」そうです。 法的な記載 地上走行についての記載は航空施行規則にあります。 航空法施行 …

【口述対策備忘録】飛行機の旋回半径!数式で理解する航空力学

今回ですけども、飛行機の力学についてです。 飛行機は急には曲がれません。 曲がると決めて旋回を始めて90°変針した時にどれくらいの旋回半径となるのでしょうか。 また、飛行機の旋回半径はどのような式で表 …

【口述対策備忘録】bankと荷重倍数と失速速度の関係

今回の記事は力学についてです。 飛行機の失速速度Vsは飛行機の重量、configuration等によって変わりますが、揺れにより荷重がかかったり水平旋回時にbankを入れることでも変わります。 どれく …