ここだけのパイロットの話

Speed Brakeの効果について

投稿日:18/07/2020 更新日:


今回ですけども、少し専門的な内容です。Speed Brake Systemについてです。

着陸後の翼

下の写真をご覧ください。

これは飛行機が着陸した直後の飛行機の翼の上の写真です。

飛行機が着陸するとこのように翼の上の数枚のSpoiler(スポイラー)という部分が翼の面に対して垂直に開きます。

ここでみなさんに問題です。

「止まるため」という答えは不可とします(笑)

止まるために開くのは正しいのですが、ここではSpoilerが立つと何がどうなるのか考えてください。

よくある解答が「進行方向に対し、Spoilerを垂直に立てることで空気抵抗を増やして減速する」というものです。

そう思った人は残念ながら間違いです。

飛行機が上空にいる時なら速度が大きいので空気抵抗によって減速することができますが、着陸後の低速度では空気抵抗の影響は小さく空気抵抗による減速の効果はありません。

では、なぜ開くのでしょうか?

それは、翼に発生する揚力を減らすためです。

飛行機の翼の上に空気が流れることによって揚力が発生します。Spoilerが立つことで翼の上部の空気の流れが妨げられて揚力は激減します。

では揚力が無くなるとどのようなことが起こるでしょうか?

下の図で簡単に説明します。

飛行機に働く力は鉛直方向では揚力L、垂直抗力N、そして重力mgです。飛行機が止まるための摩擦力Fは後ろ向きに働きます。

この摩擦力Fは垂直抗力Nに比例します。F=μN=μ(mg-L)となり揚力Lが減れば減るほど摩擦力Fは大きくなることが分かります。

最終的に揚力が無くなることで飛行機の全重量が車輪にかかる(N=mg)ことになります。

つまり、地面との摩擦力が増えて飛行機が停止しやすくなるのです。

「Spoilerが立つとどういう効果があるのか?」という問いの答えは

「揚力を減らしてブレーキの利きを良くするため」でした。

これからも飛行機の豆知識的なものがあれば紹介していきます。


-ここだけのパイロットの話
-

執筆者:

関連記事

英語の最短の上達方法[急がば回れ]

「英語ってどうやって勉強してますか?」という質問はめちゃくちゃよく聞かれます。 今回ですけども、英語の勉強法について答えていきたいと思います。 一番大事なのは発音 英語を勉強する上で最も大事なのは発音 …

太平洋のど真ん中!!ミッドウェー島について

パイロットは目的地に向かって飛んでいる最中は常に何かあったら途中で降りることができる空港を確保しながら飛んでいます。 例えば東京―福岡であれば途中に降りることができる空港は伊丹、関空、中部セントレアを …

その行為、飛行機から降ろされる!?機内での迷惑行為!航空法と絡めて解説!

Jです。 今回ですけども、飛行機の機内での迷惑行為について解説します。 珍しくパイロットっぽい専門的な記事になりました。 航空法でどのように規定されているのか。機長の法的権限について書いていきます。 …

航空大学校の2次試験(身体検査)に健康でも落ちる理由

今回ですけども、航空大学校2次試験の仕組みについて解説したいと思います。 もし航空身体検査を前もって自前で受けて問題なければ、本番の航空大学校2次試験の身体検査は大丈夫かという質問をよく受けます。 実 …

パイロットという職業の良いところ3つ挙げてみた

今回ですけども、パイロットをやってみて思ったこの仕事の良いところを紹介します。 パイロットの仕事は、試験が多く勉強量も膨大なので大変なイメージですが、いいところがたくさんあります。 僕は以下の3点が良 …