過去、日本人パイロットがコックピットからの景色を写真撮影してSNSにアップし処分されたという例はたくさんあります。
しかし、X(旧Twitter)、Youtubeなどを見ていると、コックピットからの美しい画像や映像が数多く投稿されています。ただ、それらのほとんどは外国の航空会社(または海外のパイロット)のものです。
なぜ、日本の航空会社ではコックピットからの写真撮影がダメとされているのでしょうか。
写真撮影がNGとされる「法的根拠」
撮影がダメな理由の法的な根拠と言われているのは航空法第71条の2の「操縦者の見張り義務」という項目です。
具体的には以下の通りです。
(操縦者の見張り義務)第71条の2航空機の操縦を行なつている者(航空機の操縦の練習をし又は計器飛行等の練習をするためその操縦を行なつている場合で、その練習を監督する者が同乗しているときは、その者)は、航空機の航行中は、第九十六条第一項の規定による国土交通大臣の指示に従つている航行であるとないとにかかわらず、当該航空機外の物件を視認できない気象状態の下にある場合を除き、他の航空機その他の物件と衝突しないように見張りをしなければならない。(航空法第71条の2から引用)
少し難しい法律用語が入っていますが、要約すると以下の通りです。
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雲の中など物理的に外が見えない場合を除き、航行中は他の航空機や障害物に衝突しないよう、常に見張りをしなければならない。
極めて当たり前のことが書かれているように思えます。
ここで注目したいのは、「写真撮影そのものを禁止する条文ではない」という点です。
例えば、コックピットにパイロットでない第三者が乗って、写真を撮るのは問題がありません。その人にそもそも見張り義務が無いからです。
この見張り義務は当たり前のことで本来はパイロットはしっかり外を見て安全を確保しなさいというものであって、日本では一瞬たりとも外部から目を離してはいけないという建前になっています。
法律に「別に外を見なくてよい」とは書けないですからね。法律に書くとすれば上記のような表記になります。
その建前を日本の航空会社は律儀に守っているわけです。
ちなみにこの見張り義務には罰則は規定されていません。
法律で罰則は無いですが、現在それがバレると航空局が会社に注意し、会社は個人を注意する(もしくは何らかの懲戒)ということになります。
条文の解釈と日常業務の矛盾
法律の条文は一つでも、その「解釈」には複数の視点が存在します。
写真を撮ることが見張りをしていないと解釈もできますし、写真を撮る時には外も見ているので見張りは怠っていないという解釈もできます。
今のところ国土交通省航空局の本条文の解釈は「飛行中の写真撮影は見張り義務違反に当たる」という解釈です。
一方で、他の日常業務については以下のように解釈されています。
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① 操縦しながらの食事: 見張り義務違反にあたらない
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② iPadでのマニュアル確認・鞄の出し入れ: 見張り義務違反にあたらない
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③ トイレ離席: 見張り義務違反にあたらない
食事やトイレ、マニュアルの確認も、視線を外したり席を外したりする行為です。
写真撮影だけが厳格にNGと判定される点には、現場感覚からすると少しアンバランスさを感じざるを得ません。
外国航空会社との考え方の違い
欧米などの航空会社では、「常識の範囲内であれば撮影も見張り義務の範囲内。ただし、それによって問題が生じた場合は自己責任」という合理的かつ自己責任に基づいた運用が主流です。
また、企業によってはSNSガイドラインを定め、運用ルールを明確にしているケースもあります。
現場のプロとして、全神経を集中すべき局面(離着陸時や悪天候時など)と、巡航中の余裕のある場面の区別はもちろんついています。
安全運航の本質とは何なのか、一度しっかり議論されてほしいところです。