ここだけのパイロットの話

致命的??自社養成パイロットとして就職するデメリットまとめ

投稿日:23/08/2020 更新日:


Jです。

 

今回ですけども、意外に知られていない自社養成のデメリットについて書きたいと思います。

デメリットは2つあります。まずはデメリットを先に挙げておきます。

①1人で操縦する飛行機(セスナなど)に乗れない

②転職が事実上できない

 

これらのデメリットは僕は大きいと思っています。

 

そのデメリットの原因は自社養成パイロットで取るライセンスにあります。

自社養成ではない航空大学校や私立大学を卒業してエアラインに就職するパイロット(副操縦士)は全員同じ免許を持っています。

事業用操縦士(CPL)という免許です。

彼らはこの事業用操縦士(CPL)の免許を持って航空会社に就職し、各航空会社でジェット機の型式の免許を取って副操縦士になるという流れが一般的です。

 

一昔前(数年前)は自社養成も同じ免許を取ることができました。

大卒で航空会社に入り、事業用操縦士(CPL)の免許を取ってからジェット機の型式の免許を取っていました。

しかし、ここ数年で自社養成での訓練の方式が大きく変わってしまったのです。

 

准定期運送用操縦士(MPL)という免許に変わった

ここからはJALとANAの話をします。

JALとANAの自社養成のパイロットが取れる免許は昔は航空大学校と同じ事業用操縦士(CPL)でした。

しかし、訓練方式が変わり、今は准定期運送用操縦士(MPL)という免許に変わりました。

このMPLの免許が曲者なのです。

 

さて、ちょっと復習です。

事業用操縦士(CPL)の免許でできることは何でしょうか?

できることは全部で5つありました。

航空機に乗り組んで次に揚げる行為を行うこと。
(イ)自家用操縦士の資格を有する者が行うことができる行為
(ロ)報酬を受けて、無償の運航を行う航空機の操縦を行うこと。
(ハ)航空機使用事業の用に供する航空機の操縦を行うこと。
(ニ)機長以外の操縦者として航空運送事業の用に供する航空機の操縦を行うこと。
(ホ)機長として、航空運送事業の用に供する航空機であって、構造上、一人の操縦者で操縦することができるものの操縦を行うこと。

[航空法より抜粋]

これらがかつて自社養成でも取ることができた事業用操縦士免許(CPL)の業務範囲です。

詳しくは他の記事で書いています。

>>>パイロットの免許(事業用操縦士)でできること、できないこと

 

さて、それでは新しい訓練体系で取得可能な准定期運送用操縦士(MPL)の免許の業務範囲はどうでしょうか。

それは以下のように規定されています。

航空機に乗り組んで次に掲げる行為を行うこと。
一 機長以外の操縦者として、構造上、その操縦のために二人を要する航空機の操縦を行うこと。
二 機長以外の操縦者として、特定の方法又は方式により飛行する場合に限りその操縦のために二人を要する航空機であつて当該特定の方法又は方式により飛行するものの操縦を行うこと。
[航空法より抜粋]
さて、事業用操縦士(CPL)と比べてどうでしょうか。
まずここで1つ目のデメリットを見てみます。

デメリット①:1人用の飛行機(セスナなど)の操縦はできない

この業務範囲を見て分かるように、MPLの免許で操縦可能な飛行機は構造上2人で操縦する飛行機のみです。

2人で操縦する飛行機はいわゆるエアラインのジェット機です。

 

また、MPLには「自家用操縦士」の業務範囲も含まれていないのでプライベートでも飛行機を操縦することはできません。

このMPLという免許はパイロット不足のために新しく作られたという経緯があります。

 

つまり、エアラインパイロットの副操縦士の業務を行うためだけに作られた免許です。

この制度を使えばエアラインの操縦士を安いコストで早く生み出すことができます。

 

エアラインのパイロットになりたい人はこの免許で十分だと思うかもしれません。

しかし、もっと大きいデメリットがあります。

 

デメリット②:MPLでは転職が事実上できない

僕はこれが致命的なデメリットだと思います。

パイロットは免許があるので航空会社であればどこでも働くことができるイメージですが、MPLの免許となるとそれが難しいのです。

 

なぜ転職ができないかを説明します。

実は、世界的にMPLの制度で昇格訓練をしている会社がJALとANAくらいしかないのです。

つまり、世界のエアラインではあまりMPLを採用していないため、MPLの免許を持っていたところで転職は厳しいのです。

MPLを採用している会社には転職できますがその会社は国内ではJALとANAだけです。

ちなみに、伝統的にパイロットはANAからJAL、逆にJALからANAには転職はできません。

 

さらに、航空機使用事業などに転職しようと思っても、セスナなどの1人で操縦する飛行機には乗れないのでお手上げです。

MPLを採用しているJAL、ANA間の転職ができないので事実上MPLでは機長になるまでその会社に居続けるしかないでしょう。

副操縦士の間に会社が潰れないことを祈るのみです。

 

MPLの今後の展望は暗い

MPLが今後世界的に普及すれば問題は無くなります。

しかし、聞くところによると世界的な流れはMPL制度を見直す流れになっているそうです。

当初は早く乗員を養成できると期待して始めた制度でしたが、ふたを開けてみたら旧訓練と早さがそんなに変わらなかったそうです。

ドイツのルフトハンザドイツ航空はMPLを採用していましたが、現在は自社養成は中止しています。

今後訓練を再開した際はMPLではない旧訓練に戻すとか戻さないとかという噂も聞いたことがあります。

将来MPLがどうなっていくかは見ものです。


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