ここだけのパイロットの話

マスクを巡ってCAを大声で威嚇した人を降機させた事例について

投稿日:10/09/2020 更新日:


今回ですけども、時事ネタです。

乗客マスク着用拒否で緊急着陸というニュースの衝撃

先日、国内LCC航空会社のピーチを利用した旅客がマスク着用をめぐって揉めたうえ、客室乗務員に大声を出して威圧したというニュースがありました。

当該機は機長の判断で新潟空港に緊急着陸して当該旅客を降機させて、そのせいで大幅に運航ダイヤが乱れてしまったという事例です。

この事例について思うことを書いてみました。

マスク着用拒否だけでは降機させられなかったのでは?

これはあくまで私見ですが、マスクの着用拒否だけでは降機させられなかったのではないかと思います。

マスクをしなければならないという法律は今のところありませんし、事情があってマスクができない人もいるでしょう。

今回の問題点はマスク着用が発端になっていますが、本質は別のところにあります。

それは当該旅客が安全阻害行為を行っていることです。

航空法に「マスクの着用をしないことは安全阻害行為に該当する」と書いているわけではありません。

しかし、航空法施行規則の安全阻害行為の内容のひとつに以下のように書かれています。

「航空機に乗り組んでその職務を行う者の職務の執行を妨げる行為であつて、当該航空機の安全の保持、当該航空機内にあるその者以外の者若しくは財産の保護又は当該航空機内の秩序若しくは規律の維持に支障を及ぼすおそれのあるもの」

(航空法施行規則から引用)

これを見ると当該事例は大声でCAを威圧したり、フライト中CAにマスク着用に関する持論を述べ続けて職務執行を妨げていますので安全阻害行為に当たります。

この安全阻害行為があったから降機させられたのだろうと思います。

口論だけの喧嘩では逮捕されませんが、殴り合いの喧嘩をしたら暴行罪で逮捕されるのと同じ理屈です。

マスクの着用に科学的な根拠があるかないか

感染症予防の観点からマスク着用に意味があるのかないのかという議論があります。

しかし、今回の事例ではマスクの効果の有無はこの際問題ではありません

そこは争点ではないのです。

機内で安全阻害行為をしたから航空法という法律に則り、降機させられたというだけの話です。

そういう議論を機内でCAとすること自体がナンセンスです。

そういう活動は他でやってほしいものです。

マスクができない合理的な理由があるのであれば、その理由をCAに丁寧に話せばよかったのです。

降機させるという判断は問題ない

機長の判断についてですが、降機させた判断は全く問題ありません

航空法には機長の権限として、安全阻害行為により航空機内の秩序を乱す旅客を拘束・降機させることができると明記されているので法的に全く問題ありません。

むしろ降機させなかったら機長として何のためにその席に座ってんのって感じです。

毅然とした対応は見習うべきところがあると思います。

もし僕が機長でも降機させていると思います。

今回は個別の事例についてでしたが、安全阻害行為等について広く解説した記事もありますのでよかったらそちらもご覧ください。

その行為、飛行機から降ろされる!?機内での迷惑行為!航空法と絡めて解説!


-ここだけのパイロットの話
-

執筆者:

関連記事

航空英語能力証明~国際線パイロットになる条件とは~

日本の航空会社で働いているパイロットのうち国際線に乗る人は英語を使います。 パイロットであれば誰でも国際線を運航できるわけではありません。実は国際線に行くためには「英語能力証明」の審査に合格しなければ …

航空大学校の卒業時期と就職・入社時期の関係

今回ですけども、航空大学校から航空会社への就職時期についてです。 一般的な就職は4月ですが、航空大学校の場合はかなり独特になっています。 航空大学校の入学式は年4回ある 当然ですが航空大学校の入試は年 …

航空大学校の受験記録!経験談

僕が航空大学校を実際に受験した時の話を書きたいと思います。 これから航空大学校の受験を考えている人はぜひ参考にして頂ければと思います。 航空大学校の募集要項を確認 航空大学校のホームページを見ていただ …

航空大学校に入るのに大学中退でいいか、大学を卒業後入るべきか

今回の記事はパイロットの学歴についてです。 航空大学校は大学2年終了見込みで受験できます。 大学在学中に合格したらそのまま航空大学校に進学することになりますが、そうすれば大学は中退となります。 今回で …

パイロットの訓練で苦労する人の5つの特徴

今回ですけども、パイロットの訓練についてです。 会社に就職しただけでパイロットとして飛べるわけではありません。 会社で訓練をして審査に受かった人だけが、パイロットとして乗務することができます。 訓練回 …