Jです。
今回ですけども、パイロット独特の文化についてです。
私が良いと思う点は、パイロットの社会は競争社会ではないという点です。
情報共有の文化
パイロットは訓練の初期段階で同期と情報を共有してみんなで合格を目指すように口を酸っぱくして言われます。
この「情報共有」というのがパイロットにとって1番のキーワードです。
この情報共有が重要な理由は2つあります。
①安全度が増す
安全の観点から情報共有は必須です。
例えば、誰か一人が訓練でミスをしたとします。ミスは誰にでもありうることですが、それで終わらしたらいけません。
その情報を他の仲間に共有することで仲間が同じミスをしなくなり、結果として全体の安全性が高まることになります。
しかし、もしパイロットの世界が競争社会だったらどうなるでしょうか?
ひとりひとりが有益な情報をライバルに共有するでしょうか?
そうです、もし競争社会であったらライバルよりも自分が向きに出るために有益な情報を隠してしまう可能性が出てきます。
大げさに言うとそれでは空の安全が脅かされてしまうことに繋がります。
従ってパイロットの試験は全て絶対評価となっています。訓練・試験では決して誰かと比べません。
10人いたら10人全員で合格できるように切磋琢磨するような訓練です。
②訓練効率が上がる
訓練はお金がかかります。航空大学校やエアラインの訓練は、あらかじめ訓練回数が決まっており、その回数で合格基準に満たなければパイロットになれません。
ある意味平等ですが、限られた訓練回数の中で審査合格基準になるためには自分1人の経験ではあまりにも少なすぎます。
そこで、仲間と情報共有してその仲間の経験も自分のものにすることによって規定内の訓練回数で合格することが可能になります。
同期がいればいるほど経験の数が多くなるため有利になります。
航空大学校時代、夜全員でその日の訓練で学んだことや失敗したことを同期で共有するミーティングをしていました。
パイロットの訓練は同期全体で評価される面もある
パイロットになるための訓練では審査は個人個人の絶対評価なのですが、訓練においてはその同期全体で評価されることが多いです。
まとまりが良ければ「あの期は優秀」となりますが、まとまりが悪ければ「あの期は出来が悪い」となります。
昨日一人に言ったことが翌日他の人にもしっかり伝わっているとまとまりが良い、よく勉強しているという評価になります。
そして、そういう事前情報・印象は審査官にも伝わり、まとまりが悪い期では訓練に失敗する人が多くなる傾向にあります。
逆に優秀な期だという印象があれば審査で多少失敗しても大丈夫なことがあります。人間が人間を見るわけなのでそういう先入観は意外に大事だったりします。
例えば10人同期がいたとして「1人が100点、7人が90点、2人が60点のグループ」と、「10人が80点のグループ」があったとすると、後者の方が良いグループとして見られます。
まとまりのある良いグループとして見られると全体として訓練がスムーズにいく傾向にあります。
このようにパイロットの世界は独特の文化があり、それまでは大学試験・入社試験の競争を勝ち残ってきた人にとって見れば180度違う概念で最初は戸惑うこともあるかと思います。
個人的にはとても平和な文化で気に入っています。