ここだけのパイロットの話 質問箱

揺れを完全に予測するのは難しい

投稿日:11/06/2020 更新日:


今回ですけども、揺れとシートベルト着用サインについての記事です。

トイレに行きたいのにシートベルトサインがなかなか消えないことは良くありますよね。

全然揺れていないのに何でシートベルトサインが消えないときがあるのかを解説します。

シートベルト着用サインのON、OFFは機長の裁量

まず、前提としてシートベルト着用サインのON、OFFの裁量は機長にあります。

OFFにするタイミングは誰がやっても同じになるわけではなく、同じ日の同じ天気でも機長が違えばタイミングは変わってきます。

したがって機長の天気の分析の技量でタイミングが違います。

シートベルト着用サインのON、OFFは安全に直結する判断

シートベルト着用サインの運用は1番難しいと言われています。

どれだけコンピューターによる数値予報が発達しても100%の予測はできません。

またどんなにベテランの機長でも当然揺れる場所・高度を100%把握することはできません

安易にシートベルト着用サインをOFFにしてもし揺れに遭遇して誰かがけがをした場合、航空事故として機長自身の責任を問われてしまいます。

もし乗員・乗客がケガをした場合は業務上過失傷害、死亡した場合は業務上過失致死の罪に問われる恐れがあります。

しかし100%予測できないからといって、シートベルト着用サインを飛行中ずっとONにしておくとお客様はトイレにも行くことができず、快適性が損なわれます。

このさじ加減がとても難しいのです。

ベルトサインのON、OFFは腕の見せ所

ベルトサインをON、OFFにするタイミングは機長の腕の見せ所です。

OFFにするためにはこの先大きな揺れはないという自分の中での根拠が必要になります。地上での天気の解析、実際に飛んでみての雲の形等、判断の材料はいろいろありますが絶対的なものはありません。自身の経験と合わせて総合的に判断するしかないのです。

自分の中で揺れるか揺れないか判断できないときは安全策を取ってONのままにしておくしかありません。

理想は本当に揺れる時だけONにして、揺れないところではさっさとOFFにすることです。

それができればそれがお客様にとっては1番良いことになります。

外資のエアラインに乗ったとき

外資のエアラインに乗ったときにその航空会社の規程を知らないのでよく分かりませんが、シートベルトサインが付いていてもCAが普通にサービスしていることがありました。

また、お客さんも普通に立ち歩いてトイレに行っていました。危険のサインは出しているからあとは自己責任でよろしくと言うことなのでしょうか?

世界にはいろいろな航空会社がありますが、日本の航空会社のシートベルトサインの運用は厳格だなと感じました。


-ここだけのパイロットの話, 質問箱
-

執筆者:

関連記事

航空大学校で1番大事な課程はどれ?

航空大学校は4つの課程があります。 ①宮崎座学課程 ②帯広フライト課程 ③宮崎フライト課程 ④仙台フライト課程 今回ですけども、どの課程が1番大事かを書きたいと思います。 僕が1番大事だと思う課程は、 …

航空大学校2年間のスケジュールおおざっぱにこんな感じ

今回ですけども、航空大学校の2年間の課程をおおざっぱに紹介します。 入学と共に全員寮に入る(全寮制) 全寮制です。ひとり1部屋ではありません。 初めは宮崎フライト課程の先輩と座学課程の後輩で一緒の部屋 …

パイロットって英語どのくらいできればなれますか?

今回は、パイロットの英語力について答えたいと思います。 結論から申し上げると英語できなくてもなれる道はあります。 どの道に行くかで必要な英語力は違う パイロットになるには色々な道があり、主に4つの道が …

航空大学校合格に必要な偏差値はいくら?

よく質問されることに答えていきます。 航空大学校合格に必要な偏差値はいくら?   航空大学校に合格するために最低限必要な偏差値についてです。 この質問に答えるには実は少し難しいのです。 特殊 …

パイロットになるにはどうしたらいいですか?方法を教えてください。

「パイロットになるにはどうしたらよいか?」という質問をよくされます。 今回はこの漠然とした質問に答えていこうと思います。 実は世間が思っているほどハードルは高くない さて、パイロットについてのイメージ …