Jです。
今回ですけども、飛行機と火山灰についてです。
日本は世界的に見ても多数の活火山を有する地帯です。
飛行機を運航する上で火山灰は天敵です。
目次
火山灰の成分について
火口から出てくる噴煙の成分は何でしょうか?
それは地中の鉱物です。岩石が粉になったものが火口からもくもく出てきます。
火山灰の主成分は二酸化ケイ素(SiO2)という物質です。
もちろんそれだけではなく他の鉱物も多数含まれていますが、主成分のSiO2が飛行機にとって厄介です。
このSiO2という物質ですが化学式を見ただけではピンと来ないかもしれませんが、実は人間にとって身近な存在です。
SiO2はガラスの成分なのです。
ガラスがそんなに有害なのかと思う方もいるかと思いますが、いかにどう有害なのか書いていきます。
二酸化ケイ素(SiO2)が飛行機に及ぼす致命的なダメージ
火山灰の主成分SiO2が飛行機に及ぼす悪影響を見てみます。
大きく2つの悪影響があります。
①エンジンが故障する
②コックピットの前方のガラスが傷だらけになって前が見えなくなる
この2つはどちらもそれだけで致命的になり得ます。
1つずつ見てみましょう。
①火山灰がエンジンに及ぼす影響について
飛行機のエンジンが火山灰を吸い込むとエンジンが故障します。
飛行機はエンジンが複数個ついていますが、飛行機が火山灰に入ってしまうと全てのエンジンが停止してしまう事態になるでしょう。
飛行機の全エンジン停止は推力を失うということなので墜落を意味します。
SiO2を多く含んだ火山灰の融点(個体が液体になる温度)は約1000℃と他の岩石と比べて低めです。
ジェットエンジンの燃焼室の最高温度は1100℃くらいなので火山灰が溶けるには十分です。
ガラスは解けたらマグマのようにドロドロになります。
それがエンジンの燃焼室から出て一気に1000℃以下に冷やされることで再び固体に戻ります。
そのようにエンジンの内部に異物がどんどん溜まっていき、いずれエンジンが止まってしまうのです。
実際に全エンジンが停止した事例
実際に火山灰によって全エンジンが停止してしまった事例があります。
それは1982年に起こりました。
British Airwaysのボーイング747のエンジン4発全てが停止したのです。
当機はクアラルンプール発、パース行きの便でした。
クアラルンプールを離陸し、順調に飛行していました。
しかし、スマトラ島の南を巡航中にガルングン火山の火山灰に入ってしまい、4つのエンジンが全て停止してしまったのです。
高度をどんどん失っていく中で、パイロットは何とかエンジンの再始動を試みます。
幸いにもエンジンが息を吹き返し、事なきを得たのでした。
②操縦室の窓ガラスへの影響
火山灰を触ったことある人は分かると思いますが、火山灰は非常にザラザラしています。
ザラザラした粒子がヤスリのような役割を果たしてしまい、ガラスに無数の細かい傷をつけます。
飛行機は500kt(約時速920km)くらいのスピードで巡航しています。
そのスピードで窓ガラスに火山灰の粒子がぶつかってしまうと窓ガラスが傷つき、あっという間に擦りガラスのようになってしまいます。
擦りガラスのようになってしまったらその後火山灰から出たとしても前が見えず非常に危険な状態に陥ります。
この写真のように前がボヤっとしか見えなくなってしまいます。
どうやって着陸すればいいのでしょう。頭を悩ませることになるでしょう。
パイロットは火山灰にどう対処するか
1番大事なのは火山灰のあるエリアを飛ばないことです。
火山灰には絶対に入らないような事前の準備が必要です。
出発した後に噴火してしまったらできるだけ情報を集めてルートを変えたり、高度を変えたりして火山灰を避けることが大事です。
もし、火山灰に入ってしまったらどうすればいいでしょうか?
それはできるだけ早く火山灰から出るような操作をします。
場合によってはUターンをした方がいいかもしれません。
そして、エンジンへの影響を最小限にするためにエンジンの出力を下げた方がいいでしょう。
そうすることでエンジン内の温度を下げることができて火山灰が溶けるのを防ぐことができます。
昼であれば火山灰は視認できるので避けるのは簡単ですが、夜間や雲の中を飛行している場合はより慎重な判断が必要になります。
火山灰は飛行機にとって百害あって一利なしです。
ちなみに、航空大学校で訓練する場合、九州を飛ぶことになります。
新燃岳、桜島等の活火山が多く、定期的に噴火しています。
火山灰には絶対に入らないようにしてください。