ここだけのパイロットの話

ILS CategoryⅡ・Ⅲ(CATⅡ・Ⅲ) approach!視程がほぼ無くても大丈夫

投稿日:03/08/2020 更新日:


Jです。

 

今回ですけども、航空の専門的な話です。ILS CategoryⅡ・Ⅲ(CATⅡ・Ⅲ) approachについてです。

なんのこっちゃと思うかもしれないので説明していきます。

 

最低気象条件(ランディングミニマLanding minima)

前提条件として飛行機が着陸できるかどうかをどうやって判断しているかを押さえておきましょう。

飛行機が滑走路に着陸できるかどうかは天気によって決まります。

天気といっても着陸には視程が重要です。それには滑走路視距離(Runway Visible Range:通称RVR(アールブイアール))という指標を使っています。

例えば報じられているRVRが1000mであれば、パイロットが飛行機の窓から前方1000mを見ることができるという意味です。

一般的なILS ApproachではRVR550mが着陸の最低気象条件とされており、RVRが400mや300mだと滑走路にアプローチをすることすらできません。

その場合は他の天気のいい空港に向かうか、上空で待機してRVRが550m以上に回復するのを待ちます。

 

CATⅡ・Ⅲは特別にRVRが550m無くても着陸してもいい運航

例えば霧の出やすい空港であれば、RVRがすぐに550m未満となってしまい、就航率が下がってしまいます。

そこで登場するのがILS CategoryⅡ・Ⅲ(CATⅡ・Ⅲ) approachです。

Category(カテゴリー)を略してCAT(キャット)と言います。パイロットはCATⅡ(キャットツー)、CATⅢ(キャットスリー)と呼んでいます。

以下、CATⅡ、CATⅢと書きます。

CATⅡはRVR300mあれば着陸できる運航です。

そして、CATⅢについてはCATⅢaとCATⅢbに分かれており、CATⅢaはRVR175m以上、CATⅢbはRVR50m以上で着陸することが可能な運航です。

CATⅡ・Ⅲの設備がある滑走路はRVRが550mを下回っても就航することが可能なのです。

※日本でCATⅢをするときは全てCATⅢb

 

日本のCATⅡ・Ⅲ可能な空港と滑走路

CATⅡ・Ⅲ両方できる滑走路がある理由

ご覧の通りCATⅡ・Ⅲ両方できる滑走路があります。

「両方できるなら全部CATⅢやればいいじゃん」と思うと思います。

実はCATⅡよりもCATⅢの方が実施するための条件が厳しいのです。

例えば釧路は滑走路の幅は45mです。

その45mの滑走路に向かって数10メートルしか前が見えない状態で時速300キロでツッコむわけなので、冷静に考えるとすごく怖いことをしています。

従って、実施に際して法律に基づいたあらゆる要件をクリアしていなければならないことになっています。

その要件がCATⅡとCATⅢで違うのです。

CATⅡの方がCATⅢに比べて要件は緩いのです。

要件は地上施設、機上装置、パイロットの資格、気流の状態、風の強さなど多岐にわたります。

CATⅢは要件満たしていないけどCATⅡならできるという状況が存在するため、CATⅡとCATⅢ両方できる空港が存在しています。


-ここだけのパイロットの話
-

執筆者:

関連記事

東京国際空港(羽田空港)【RJTT/HND】

東京国際空港の特徴 世界的に見るとアプローチはクセがすごい。後述するが、なんでこのアプローチにした?って感じ。まさに外航泣かせ。 羽田空港は他の空港と違って、天気が良いときと悪いときでアプローチの方式 …

航空大学校3次試験で大事なことを解説

Jです。 今回ですけども、実際に受けた「航空大学校3次試験」に対する僕の見解を説明をしておこうと思います。 航空大学校の3次試験とは最終試験です。 これに受かれば航空大学校に合格です。 試験内容は面接 …

パイロットの能力は出身ソースによって違うのか?

Jです。 パイロットの出身ソースはたくさんあります。 「出身ソース」というのはそのパイロットがどこで教育を受けたかを意味します。 今回ですけども、出身ソースによって能力や、傾向に違いがあるのかを様々な …

なんでパイロットになろうと思ったの?【面接での定番の質問】

Jです。 今回は少し個人的な質問に答えます。 なんでパイロットになろうと思ったの?   これに答えていこうと思います。 これは航空会社の採用面接でもよく聞かれる質問です。航空会社の面接で僕も …

火山灰(Volcanic Ash)の危険性!飛行機にとっては致命的

Jです。   今回ですけども、飛行機と火山灰についてです。 日本は世界的に見ても多数の活火山を有する地帯です。 飛行機を運航する上で火山灰は天敵です。   火山灰の成分について 火 …